2020.10.09
2020.10.09
建築地の気候、日照、風、風土、お客様のニーズ、さらにお客様がまだ気がついていない潜在ニーズを感じ気付づかせ、自然に間取りの中に織り込み、住み心地へと具現化していく、大胆かつ繊細なその様はまさに空間創造のプロフェッショナルである。
実際に建築家のアイデアを紐解いていきましょう。
中庭テラスのある家
第6回 R+house デザインコンテスト 審査員特別賞 橋本純賞 受賞
建築家:斉藤真二
家族構成:2人
建築地:徳島県阿南市
都市計画:市街地調整区域
建ぺい率:60%
容積率:200%
敷地面積:55.5㎡(全体の内建築可能部分として)
施工面積:38.7㎡
延床面積:30.92㎡
建築地の特徴として一番に挙げられるのは、接道を挟んで正面にコンビニエンスストアがあり、その駐車場への出入りによる視線や音、光が24時間影響を及ぼすため、ご家族のプライバシーをどう確保するかが最大のポイントとなりました。また、敷地のすく西側には3階建てビルが建ち、そこからの視線等を考えると、採光や窓の配置にも大きく影響を及ぼす立地でした。これらの特徴をプラスに考えれば、多数の視線を受けるため、地域のランドマークとして存在させることも可能です。
※西側3階建てビル 将来的に解体することも予想される
※南側の状況 コンビニ以外にも全面道路も車の通りが多く、信号機があるため、数台列をなして車が停まることもよくある。
四角を最大限に活かしたデザイン。建物の四角、南側の壁の四角、窓の四角、アプローチの四角など、シンプルな四角だけの組み合わせで、「閉じながら見せる」という、プライバシーとデザインを両立した、飽きの来ない長く愛せるデザインとなりました。
コンビニがある南側に壁を設けることで、不特定多数の視線からプライバシーを守り、家族が安心して生活することができます。
広い玄関は趣味の自転車のメンテナンスやお客様の対応など、様々なシーンに使うことを想定し、奥に家族導線を設けました。また、南側に壁が立つことで、カーテンのない大きな窓を設け、より広がりを感じられる贅沢な玄関・アプローチ廻りの空間となっています。
家族玄関から最短距離でキッチン・ダイニング・リビングへ行ける裏導線を設けました。
収納を多く設け、不要なものを持たずにリビングへ辿り着けます。
キッチンを中心に回遊性を確保したので、2階へのアクセスも含め、家族の誰もが最短距離で目的地へ辿り着けるようになっている。また、一日を通して光や家族の動きを感じられる場所となっている。
唯一目線を気にせず抜けている方向でもある東側の大きな開口からは、朝日を気持ちよく取り込むことができる。
中央に吹抜けテラスを設ける事で、リビングやキッチン、階段や2階共有スペースへの採光を確保した。吹抜けに面する2階の窓をあげて引違いとし、光だけでなく風の通り道として2階の各部屋へ風を取り込むこともできるハブ的役割を持たせた。
吹抜けテラスは家中に光や風を届けてくれるだけでなく、この家の象徴のような一つの部屋としても存在し、内と外をつなぐ役割を果たしている。
あえて北側にリビングを配置する事で、コンビニからの距離を確保し、プライバシーを保った。また北側の安定的な光と、テラスからの光を取り込めるようになっている。
中庭を設けることは通常コストアップにつながる要因ではあるが、それ以上に建物全体の形状をコストパフォーマンスの高い四角の組み合わせとし、アプローチと中庭デッキを組み合わせることで、スペースや仕上げ面積の効率アップを図っている。
東側には親族の住む高いビルと交通量の多い道路、南側にはコンビニがあり24時間不特定多数の視線がありました。また西側には倉庫と実家があり、北側もいずれは建物が建つ可能性もある中で、まず一番にプライバシーをどう確保するかを考え、一度全てを閉じ必要な箇所を開けていく作業を行いました。
その中で、特徴的な吹抜けテラスを設けることで、北側のリビングやキッチン、2階の階段と家族が毎日使う場所にきちんと光と風を取り込むことが可能となりました。
また、施主希望の靴のまま作業できる空間を確保し、立地的に難しいと思われたBBQなどの外遊びも可能になりました。
設計:建築家 斎藤 真二
Atelier if 一級建築士事務所
・1971年 東京生まれ
・1994年 日本大学工学部建築学科 卒業
・1994年 コーナン建設 設計本部 入社
・1997年 設計事務所、各種ハウスメーカー設計担当
・2003年 Atelier if 一級建築士事務所 設立建築家コメント
家族の形は色々ありますが、私は楽しさや高揚感、やすらぎや落ち着きなどの「感性」を大切にし、空間を表現します。自分たちが家に合わせるのではなく、住まい手の感覚でどんどんカスタマイズし、自分たちに家を合わせていくことができるような、一般的な住まい方とはちょっと異なる家づくりの応援をしていきたいと思っています。