2021.08.09
木の国の話し①(伝統木造)
ヒノキの香りで漂うなかに強大な梁が横たわる。
いちばん長いもので、おおよそ50尺(約15メートル)あると聞いた。
常は宮大工が囲み、切り組をしているらしい、
まわりに落ちた臍の切りくずが微かに芳香をあげている。
宮大工と聞くと、突拍子もないが朱鷺を思う。
学名Nipponia nippon 。日本を代表するような名前のその鳥だが、日本産は絶滅した。
宮大工の減少がそんなイメージと結びつけるのだろう。
伝統木造、
600年代に朝鮮半島から伝わった卓越された技術は、伝承され、
日本の気候に醸成され、いまでは歴史的建造物、神社やお寺しか見ることが出来なくなった。
とある製材所での出来事、自然と山と木のことを知りつくした者にしかわからない世界を見ながら、
その大工さんは若い僕に話した。
落ちていた木片を手にしゃがんで、製材された、たくさんの木材をどう組みあげていくか書き出したのだ。
見る見るうちに一棟の家屋のスケルトンが地面に現れた。
それから30年が過ぎた。目の前にあるたくさんの木材と木の香りが、
その時のこと思い出させたのだ。現在、まだ宮大工は絶滅していない。
少しホッとする。
まさみ